株式会社 Kae マネジメント(以下、Kae マネジメント、本部東京都台東区、代表取締役 駒形公大)は、令和 4 年度調剤報酬改定に伴い、施設基準届出の変化等について、2023 年6月時点の状況について調査を行いました。
2022年度調剤報酬により新設された「調剤基本料3-ハ」により300店舗以上を有するチェーン企業に大きな影響を与えました。新しい調剤基本料区分の新設により地域支援体制加算にも「新たに調剤基本料3-ハに該当する薬局は、1年間に限り調剤基本料1を算定しているものとみなす」という経過措置が設定されていました。
2022年度は「調剤基本3-ハ」に該当しながらも地域支援体制加算1・2を算定することが可能となっていましたが、2023年度からは「地域支援体制加算3・4」の算定対象となり、これに伴い報酬も、2022年度、2023年度と段階的に引き下げられることになります。
今回の調査では各厚生支局で発表される施設基準届のデータを基に、施設基準届出状況の分析を行い、6月に発表された「社会医療診療行為別統計(令和4年6月審査分)」の分析と併せて、「対物から対人」をテーマに進められた改定結果を振り返えってみたいと思います。
調剤基本料の分類と市場占有率
調剤基本料は医薬品の備蓄・摩耗等の体制整備に関する経費を評価した報酬であり、その区分は薬局経営の「効率性」を踏まえ設定されています。令和4年度調剤報酬改定では300店舗以上の同一グループを対象とした「調剤基本料3-ハ(32点)」が新設され大きな話題となりました。
「調剤基本料3-ハ」の新設より、300店舗以上を有するグループでは「調剤基本料3-ロ」「調剤基本料3-ハ」を算定することになります。これにより300店舗以上を有するグループの市場占有率を把握することができます。厚生局届出から確認をすると「基本料3-ロ」に該当する薬局は3,792軒(6.2%)、「基本料3-ハ」に該当する薬局は9,371軒(15.3%)となり、併せると約22%に該当します。日本保険薬局協会が行った調査分析によると、24.5%となっておりますので、業界に占める大手企業の占有率は25%弱ということが分かります。「基本料3-ハ」に該当する企業は、調剤・ドラッグストアを含め18社となっています。
経過措置が終了した地域支援体制加算
次に経過措置が終了した地域支援体制加算の届出状況を見てみます。
先に説明したように、2022年度改定で新たに「調剤基本料3-ハ」に該当した薬局では1年間に限り「調剤基本料1」を算定しているものとみなし、「地域支援体制加算1・2」を算定することが出来ました。その結果もあってか、改定前と比べ「地域支援体制加算1・2」の届出件数に大きな差はありませんでした。2023年5月まで時系列にみていくと、「地域体制加算2」を届出する薬局数の増加がみられる一方で、「地域支援体制加算1」を算定する薬局数が減少しています。
経過措置が終了した2023年4月以降の届出数を見てみると、「地域支援体制加算1・2」の届出数は共に減少している一方で「地域支援体制加算3・4」を算定する薬局が増加をしています。経過措置に伴う届出の移行が進んだことが要因に挙げられます。しかしながら、調剤基本料3-ハを算定する薬局で「地域支援体制加算2」を届出ていた薬局は「地域支援体制加算3」に移行しますが、報酬上は「47点→17点」と1枚当たり30点の減少になり、基本料変更による10点の減少と併せると改定により1枚当たり利益が400円減少したことになります。
この他、注目すべき点として求められる実績要件「3項目以上」を満たした薬局数の推移が挙げられます。「地域支援体制加算2以降」を届出する薬局数の推移です。2022年7月時には12,537軒だったのが、2023年5月時には15,670軒へ増加しています。総届出数の推移は減少していますが、このような項目をピックアップしていくと対人業務への移行は進んでいるとみることができます。
対物から対人へ ~調剤料から調剤管理料へ~
次に2022年度改定で見直された調剤料についてみていきたいと思います。従来の調剤料を薬剤調製に掛かる業務と、薬学的知見に基づいた業務に分け「薬剤調製料」と「調剤管理料」が新設されました。「調剤管理料」については対人業務である薬学管理料に分類させています。
「調剤管理料」が薬学管理料へ移行したことによって、薬学管理料が占める割合が大きくなっています。技術料に占める調剤料の割合が高いことが指摘されてきましたが、「薬剤調製料」のみとなり、割合は低下しています。一見すると対人業務に大きくシフトしたようにも見えますが、報酬の実態が旧調剤料に類似している点が既に財務省からも指摘されています。今後の動向に注目です。
後発医薬品調剤体制加算
政府目標が「2023年度末までに全都道府県で80%を超える」となり、次回報酬改定にどう影響するのか注目が集まります。2022年度改定では加算1~3までの求められる%の引上げが行われました。
改定による影響はあったものの、1年が経過した地点では届出薬局数も増加していると言えます。
金額ベースでの比較をしてみたいと思います。2021年は加算2が算定金額数の50%を占めていたのに対し、2022年は加算3が全体の68%を占めています。旧報酬では加算1「15点」、加算2「22点」、加算3「28点」と設定されていた報酬が、2022年度改定では加算1「21点」、加算2「28点」、加算3「30点」と増点されたことが要因として挙げられます。
調剤報酬改定から1年が経過し、改定結果に関する数字が公表されるようになってきました。今回は1部の分析をご紹介しましたが、より詳細な分析が行われ2024年度同時改定に向けた議論が行われていきます。限られた財源の中で、適正化(減点)される項目と評価(増点・新設)される項目が出てきます。
公表されている情報をうまく活用し、仮説を立て次回改定に向けた行動を起こす必要があります。弊社では引き続きデータに基づいた分析から皆様に役立つ情報を発信させて頂きます。
※出典:各厚生支局施設基準届出より
令和3年、令和4年社会医療診療行為別統計
日本保険薬局協会公表「調剤報酬等に係る届出の調査報告書」
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